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2016年5月8日の日記
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カードと90。
[小説]
えー、楽天カードの5月末請求が13万を超えていて、まあ、日常なのですが。
いつものごとく明細見てもこれと言った支出がないのですよ。
一番大きなのは、サーバレンタル年間支払の23374円で、次が外付けHDD4TBの12980円でした。
後はEDYチャージが1万で二回あっただけで、他は全て1万円未満でした。
私の場合、1万円以下の買い物は何の躊躇もなくするため、それが積み重なってこうなっている感じです。
ちょっとこの辺りの金銭感覚を何となしなければならないかもしれませんね。
90は、書き進めています。
ちょっと書きにくい部分で、思った以上ページ数を消費して、中盤の盛り上がりポイントがかなり遅くなっています。
もう少し前を抜くかどうか考えたいですが、締め切りが今月末なのでそこまで時間が取れるかどうか分かりません。
そうなったら、そこまでの序盤をもう少し面白くする必要がありますね。
「では失礼します」
中は、まだ実際には見たことはないが、植え付けられた記憶にはある王の居間……あれ?
俺の知っているのとちょっと違う。
王の謁見の間は、王宮入り口近くにあり、ここは寝所や居間があるところだから、俺やユララの部屋のように寝室も前に謁見スペースは存在しない。
少なくとも俺の記憶にはないのだが、俺の目の前には謁見のようなスペースがあり、ユララの部屋で見たような御簾のような、いや、あの子の部屋よりもっと目の細かくて豪華そうなそれがあった。
向こうに人の気配がするから、ここで間違いないのだろう。
「本日はお招きいただきありがとうございます。到着が遅れて申し訳ありませんでした、大きな事故があり、旅程を遅らさざるを得なかったのです」
凛とした、よく通る声。
千年続く巨大王国の姫君の醸し出す、荘厳な口調。
漂って来るのは、お香を焚いたような香り。
これがヴェスティール王国の王女か。
「……と、申しております」
「へ……?」
誰が?
「わが姫は、この国で魔法を学べることを大変喜んでおります。初めての外国という事もあり、不安な面もございましたが、このように歓迎していただき──」
「ちょ、ちょっと待ってください?」
「……なんですか?」
定型の挨拶を止められ、ムッとする女性。
だが、俺はそれでも確かめる必要があった。
「あの、あなたは王女様ではないのですか?」
「いえ? この方はもちろんヴェスティール王国の第二十八王女であらせられるマリネシャ・ヴェン・ドゥルフェーズ・ヴェスティール殿下その人ですが?」
うわぁ……これはまたツッコミどころが多いな!
第二十八王女って王様頑張り過ぎだ、ってのは置いておくとして、やっぱりこの声の人は王女様じゃないのか。
御簾の向こうでは確かに二人が座っていて、一方にもう一方がひそひそと話をしているのが聞こえてくる。
お前ら、エルフの耳の良さをなめんなよ?
視力聴力は人間より獣並だからな?
そのくらい聞き耳を立てれば聞こえるんだからな?
『のう、この王子はとても格好いいと聞いているのじゃが、見ては駄目かの?』
『なりません。姫様は高貴なるお方、このような小国の、たとえ王子とは言え、簡単にお目通りを許してはなりません』
『しかし、それでは魔法は教われぬのう……どうすればいいのじゃ……?』
『それはお任せくださいませ』
なるほど、この二人もアイリと同じでライベス王国がただの小国だと思ってるタイプか。
「それで、サトル王子。殿下に魔法を教えて頂くことになりますが、今後はこの場所で教えて頂きたく存じます」
「は? どういうことですか?」
「マリネシャ殿下は高貴なる身の姫でございます。合わせてサトル王子も高貴な身の上、間違いがあっては私は姫を私に委ねてくださった国王陛下や第五王子、そして伯爵である私の父に合わせる顔がありません。ですからお互いの顔も声も見せずに教えて頂くことは出来ないでしょうか?」
出来るわけねえだろ。
俺が心の中で思った最初の言葉はそれだ。
そもそも魔法なんて座学だけで覚えられるわけがないだろう。
おそらくそれは当の姫様なら分かってるだろう。
だが、このお付きの奴が姫様に意見を言わせてないんだ。
しょうがない、今後こいつに威張られても後が面倒だ、失礼のないようにと言われたが、アイリなんかは最初に失礼があったから仲良くなれた面もある。
それに万一そうならなかったとしても、それはそれで問題ない。
もう、アイリと結婚してアルゼーン帝国と同盟を結ぶのは、俺の中でほぼ確定事項だからだ。
よし、ここは──。
「潜伏(ハイド)」
俺は気配と姿を消す、妖精であるエルフの能力、潜伏を使う。
もちろん俺自身は使うのが初めてなのだが、こうして当たり前のように使える。
「神速の獣(スヴェルズ)」
そして、ユララの時のように、音を立てないように、御簾の脇から奥に入る。
まずはその面を覗いてやれ。
「…………!」
そこには、ふわふわした古式ゆかしい衣装を来た二人組が座っていた。
元の世界の日本の着物、というとかなり異なるんだが、まあ、アジアの高貴な女の人が来てるような服装って感じかな。
背格好から、女性だと思われ、一人は更に小柄だ。
エルフは人間より若干小柄っぽいのだが、そのエルフの女の子であるユララより更に小さい。
おそらく子供に近い年齢だと思われる。
どうして「おそらく」なのかと言えば、顔が見えないからだ。
こいつら、あんなに分厚い御簾があるにも関わらず、更に二人とも平安貴族のような長い帽子をかぶっていてその前面にはヴェールのようなものをつけていやがった。
しかも、小さい子の方はその帽子からやたら長い白の糸のような物が背中に伸びていた。
何ていうか、こいつらと夜中に会ったら俺、声上げて叫びそうだ。
その小さな方が大きな方にひそひそと話をしている。
『離れて教わるのは無理なのじゃ。魔法はそう簡単に教われるものでもないのじゃ』
『分かってますよ、こうして無茶を言って立場の違いを分からせた方が今後やりやすくなるのです。もちろん最終的には対面で教えさせます。お任せください』
……そういうことか。
まさかすぐ隣で聞かれているとも知らずに勝手な事言いやがって。
どうせこんな浅はかなこと考える奴は顔も知れてるだろう。
あと、こんな馬鹿に乗せられてる王女の方もな、そもそも喋り方がキモい。
どうせ、不細工が二人並んでるんだ、こんな化け物みたいな帽子かぶらなくたって心なんて丸わかりなんだよ。
こんな奴らと仲良くするつもりなんかねえ、こんな帽子剥いで面を拝んでやる。
俺は潜伏を解くと同時に小さい方の帽子を引き抜いてやった。
「……あ」
そいつは小さな声を上げ、驚いて俺を見上げる。
そして、多分、俺も驚いた表情をしていたことだろう。
その女の子は、人形のようだった。
美しさを計算し尽くしたような綺麗な造詣。
きめの細かい白い顔が、俺を少し怯えた表情で見上げていた。
何より彼女が特異なのは、その髪だ。
さっきは帽子の飾りだと思っていたその白い、オフホワイトの長髪。
それは彼女の存在を現実離れさせ、やはり人間ではない存在に思わせてしまう。
いや、今は人間じゃないのは俺の方なんだが、この子のこの容姿は、確かに隠したくなるのも分かる。
「あ……いや……」
俺は面を拝んで一言くらい言葉を吐くつもりだったが、何も出て来なかった。
可愛くてもそうでなくても、多少皮肉めいた言葉は容易してたのだが、そんな言葉は吹き飛んでしまった。
「ぶ、無礼者っ! 何ですか貴方は!?」
隣の奴が怒鳴る。
深くかぶっていたベールを脱ぐと、こちらは、まあ、可愛い。
俺を睨んでる表情なんて、アイリと初めて会った時を思い出すくらいの美少女だ。
ゆるふわっとした、おそらく天然のくせ毛は若干の色が混じるシルバーで、その瞳は赤い。
年齢は、どのくらいだろう、十七歳のころの俺よりは年上に見えるが、二十歳は行ってないだろう、胸はふわふわした着物みたいな衣装にもかかわらずその存在を主張できるくらいの大きさだ。
あれ、脱いだら巨乳なんじゃないか?
うん、可愛いし、おそらくこれまでの人生で見たことのない髪や目の色だけどさ。
その前に姫様の方見たから、インパクトがなくなったんだよな。
「いや、どうせ教えるんだからさ、顔くらい見てもいいだろ? 挨拶に来たのに顔も拝めないなんてありえないからさ」
このタイミングで敬語のままだとなんだか逆に変な気がしたので、砕けた口調に変える。
「貴方は、この方をどなたと思っているのです! ヴェスティール王国の第二十八王女の──」
「知ってるし、さっきも聞いたよ。俺だって王子だから同じようなもんだろ」
「こんな辺境の小国の王子と、歴史ある大国ヴェスティール王国の王女様と同列なわけがないでしょう!」
「歴史? あのな、ライベス王国の方がヴェスティール王国より建国が数年早く出来たらしいぞ? 歴史には大差ないんだよ」
俺の頭の中に植え付けられた、エルフなら誰でも知っている知識で、この子に反論してやる。
「そ、そんなわけが……えっと……例えそうだとしてもどうだと言うのです! こんな小国にどんな歴史があろうと知ったことではありません!」
おそらくライベス王国なんてこれまで知らなかった女の子が一瞬戸惑ったが反論する。
「小国で千年も生き残っているってことがどういうことか分からないのか? どんな国が攻めて来ようが全て追い返してきたんだよ。大きいから誰も手出ししなかった国とは違うんだよ」
「だとしても! 貴方とマリネシャさまとの間には大きな格の違いというものがあるのです!」
あー、これは駄目なやつだ。
何を言っても高貴だ格が違うって言い張って、自分の言葉の説得力なんて考えもしないモードに入ってる。
こんな女の子は前世にもよくいたよ。
こういう場合、そこでそれ以上攻めても意味がない。
「で、あんたは誰なんだよ? その高貴な王女様のそばで威張ってるだけの腰巾着か?」
「無礼な! 私はヴェスティール王国ティラー伯爵家の四女、シルシャ・ティラーです! 私の身分でやっと貴方とお話が出来る身の程ですから、私がお話をしているのです!」
「ティラー伯爵家なんて言われても知らねえよ。そんな国内でしか通用しない程度の家柄でなに、威張ってんだよ。国を代表する俺やこのマリネ、だっけ? くらいじゃなきゃ、俺の方が格が低くて話せねえよ!」
「…………」
いきなり黙り込んだ、女の子、シルシャさんだっけ? が、赤い目で俺をじっと睨んでいる。
これで完全にキレさせたかな。
自分の考えに凝り固まってる子は、一旦キレさせて自分を解放させるのが一番効率的だ。
さて、どう出る?
俺はシルシャさんがどう出るかを観察する。
直接殴りかかってくるなら殴られよう。
エルフの動体視力からすれば、避けることはたやすいんだが、それは彼女にストレスを溜めるだけだ。
とにかくキレさせてストレスを解消させてから冷静に話をしよう。
「……この国を、攻撃します」
シルシャさんがしばらくして口にしたのはそんな言葉だった。
「は? 何言ってるんだよ?」
「攻撃します! 私は我が国の軍を統括している第五王子殿下にご縁があります。彼に軍を派遣してもらいます!」
「おいおい、知らないのかもしれないけど、ライベス王国の軍事力はかなり──」
「知ったことではありません! 貴方は私の家を侮辱しました! それは絶対許せるものではありません!」
白い顔を少し赤くして、赤い目を潤ませて俺を睨むシルシャさん。
あー、そうキレたか。
前後が分からなくなって今後どうなろうと知ったことではなく、今目の前の俺を任せることだけを考えてそのメンツを潰すためだけに行動しようとする。
こういう、プライドキレはとりあえず、冷静にさせるためにいったん謝った方がいいな。
「まあ、待てって」
俺はもう俺の言うことは受け付けない、という態度のシルシャさんの両手をつかみ、俺を向かせる。
「離してください! もう貴方とは──」
「悪かったよ、家のことはさすがに言い過ぎた。ごめん」
「…………」
シルシャさんはまだ息は荒いが俺を睨みながら、少しずつ冷静になりつつある。
流石にやり過ぎたと思っているところか。
「ただ、その誇りとかプライドってのは俺にだってあるんだ。ライベス王国は確かに小国だが、それは侵略を一切しない防衛国家だからだ。軍事力はあんたの国には及ばないが、小国レベルじゃない。そして、防衛に徹した時のエルフ族は、強い」
俺は、ただじっと俺を睨んでいるシルシャさんに語りかけるように言う。
「俺たちはエルフ族だけで生きていける。特に国を大きくしたい欲もない。それだけなんだ。それは分かってくれ」
「……分かりました。貴方が家を侮辱した件は許しましょう。そして、こちらこそこの国を侮辱して申し訳ありませんでした」
シルシャさんが頭を下げる。
キレさせて怒鳴らせたことでストレスが解消したのだろう。
さすがにそこは大人の対応だ。
「いえ、こちらこそ無礼な行動をして失礼なことをして、申し訳ありませんでした」
だから、俺も大人の対応をする。
俺は十七歳だったけど、このエルフのサトルは六十七歳らしいから、彼女よりも大人の対応をしなきゃならない。
「ごめんな? マリネ? 怖かったか?」
「貴方はっ! また姫様に失礼なことを!」
「よいのじゃシル。わらわも出来ればサトルとどちらが上などと考えずに話をしたい。ここにいる時くらいは身分を忘れていたいのじゃ」
それまで俺とシルシャさんの喧嘩をただ茫然と見ていたマリネは、初めて表情らしきものを見せた。
「はい、姫様がそれでいいのでしたら……」
「シルさんも気軽に喋っていいからな?」
「シルさ……分かりました。歳も近いようですし気軽に話しましょう」
一瞬またキレそうになったシルさんだが、雪解けの空気を読んで我慢した。
「いや、俺、エルフだからさ年齢は思ったより上なんだ」
年齢の話になるとややこしい。
俺自身は十七歳で、これまで経験は十七年分なのだが、この身体に植え付けられている記憶は六十七歳なんだよな。
「? 私は十八歳、姫様は十四歳ですが、貴方は私と同じくらいに思えますが?」
「まあ、俺はエルフだから成長とかそういう概念が違うんだ。俺は六十七歳。エルフは百歳でやっと大人って感じだ」
「そうですか……へえ」
シルさんが俺に興味を持ったようにじっと眺める。
その後ろではブラウンの瞳がやはりじっと俺を見ている。
「六十七歳であれば、父上よりも年上じゃのう。その割にサトルには威厳がないのう」
じーっと、俺を見上げるマリネ。
うーん、この子、可愛いな。
「うん、まあ、人間の同じ歳くらいと考えてもらっていいからさ。あー、じゃあ十七歳ということにしよう。そう考えてもらっていいから」
マリネはアイリみたいな動の可愛さじゃなく、静の可愛さというか、じっとしている人形にような可愛さだ。
「とにかくさ、明日からよろしくな?」
「うむ、分かったのじゃ」
この子に明日から魔法を教えるのか。
そう思うと、少し午後も退屈せずに済みそうだ。
最終更新 2016/05/08 13:34:02
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