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2017年3月11日の日記
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鍋と97。
[小説]
一月以上更新しませんでしたが、書くこともありませんでした。
そして、今回も特に書くことはありません。
漫画とアニメを見て、仕事して、小説を書いてるだけの日々です。
ああ、休日の朝食がお好み焼きをやめて夏くらいから焼きそばとかにして、更に最近は鍋になりました。
ええ、鍋。
朝から鍋。
鍋スープと肉と白菜、キノコ類とか買ってきて煮込むという簡単な料理です。
何でこうなったかと言いますと、春ごろに薬の副作用で胃がもたれやすくなって、お好み焼きをやめて焼きそばにして、更に普通の味噌煮込みうどんにしてたんですが、1月の雪が降った後くらいにもっと暖まるのがいい、と思って鍋にしてみたのですが。
価格的に大して変わらなかったので、そのまま鍋になったのですが。
そろそろ鍋の季節終わりですね。
今後どうしようか考えているところです。
さて、今は97を書いています。
世界観はハイファンタジーに近いですが、完全な剣と魔法の世界でもない感じのふわっとした世界です。
主人公は世界規模の金融会社の社員で、独自の私兵も諜報機関も保有している組織の話です。
『え? 侵入してきたの? 周辺調査じゃなくて?』
「え? 潜入前に調査がいるんですか?」
お互いの言っていることに齟齬があることに気づいたのはリーナだけだった。
『いや、そうじゃなくってね……ま、いいや』
リーナは説明を諦めた。
ラクシルの事務所に報告に戻ってきたメイフィは、意味も分からないまま首をひねる。
メイフィに与えられた任務は、とある国の貴族の持ち物である魔道研究所の調査だ。
研究所に資金を融資している社は、そこで開発されている、魔道具の進捗を知りたいので探ってくるよう命じられたのだ。
ラクシルの通常の任務では、とりあえず研究所の周辺を歩いて、所員が行きそうな酒場や食堂を探り、話を聞いたり、直接話してみたりすることなのだ。
メイフィは可愛いし、まだ成熟した女性とは言えない年頃なので、所員の一部は気を引きたくて「どうせ分からないだろう」と話をして、「難しい話だけれどとにかくすごい」と言われたがる者もいるのだ。
そういう意味で、彼女はぴったりだろう、と行かせたのだ。
だがそれを、メイフィは研究所に侵入して直接書類を探って来い、という指令だと思い、侵入して、情報を得て来たのだ。
『誰にも見られなかったんだよね?』
「もちろんそんなへまはしません!」
自信たっぷりで応えるメイファ。
『へえ、情報の精度は高いよね。何が欲しいのか分かって持ってきたみたいだね?』
「そ、そうですか? よかった、ちゃんと仕事出来て」
ほっと胸を撫でおろすメイフィ。
彼女はリュークスでは戦力にならないと評価されたと思っているので、ここで評価されないと行き場がないと思い込んでおり、必死に頑張ったのだ。
『ヴェルムさんもよくこんな子を見つけて来たよね』
「え……?」
『彼の人を見る目だけはボクも信頼してるからね』
自分は、彼に「見つけて」来られたことになっている?
いや、そんなわけはない、彼がしたことは自分にこの会社を受けろと言った事だけで、彼は何の手助けもしてくれなかった。
誘っておいて無責任な奴だ、とその時は思ったものだ。
家族全員を失った自分が、こうして生活を続けられているという事は、まあ、その点に関してだけは感謝してもいいが、別に自分は彼にスカウトされたわけではない。
ヴェルムの悪口はリュークスで散々聞いた。
あいつは、成績と手柄のことしか考えていない、感情のない自動操人形(オートマトン)だ。
あいつが女に言い寄っているところを見たことがない、部長が好きな男色じゃねえか?
など、そのほとんどは根も葉もない中傷を、シャムレナを中心とした荒くれ者の冗談として言っていることはメイフィも理解している。
が、そこまで嫌われている彼が、では大物であるかと言われれば、それは否定するしかない。
「わ、私は別にヴェルムさんに見つけられたわけではないです……」
何となく、自分が彼の手柄になっていることが嫌だと思ったメイフィは、そう反論した。
『え? そうなの?』
「はい、確かに誘われましたけど、それは私に行く当てがなかったから、話のついでに選択肢の一つとして言われただけですし」
確かに誘われたのは事実だ。
だが、自分が頑張れば彼の出世になる、という構図が気に入らない。
いや、もしも彼が本当に自分を誘って、入社も融通してくれたというならまあ、構わないところではあるが。
実際に志願して、採用されたのは自分の功績だ、それ以外の何者でもない。
『でも、彼、部長に私が責任をもって育てます、とか言って掛け合ったって聞いてるよ』
「え……?」
そんなことは初耳だ。
そもそも、態度ではなかった。
最初に入らないかと聞いた時も、誘われたのかと思っていたら、「自分の実力で入れ」と言われたはずだ。
少なくともそれに近いことを言われている。
そして、入社して会った時も「本当に入社したのか」のようなことを言われているし、少なくともそんな態度だったと思う。
「そんなことは、ないと思います、けど……」
メイフィも言う程ヴェルム本人を知っているわけではない。
だが、その少ない印象でいいと思ったことはないし、リュークスでの話を聞く限り、悪い印象しか受けない。
まあ、その中から必死に頑張っていいところを挙げるとするなら、頭が切れる事、仕事に、いや、仕事以外でも真面目であること、上の命令は逆らわないこと、くらいだろうか。
少なくとも情で動くことは絶対にないと言い切れる。
あの時のメイフィは、おそらく誰からも同情を買える状況にあったが、彼だけは同情などしなかった唯の一人と言い切れる。
『でも、ボクが聞いたのは部長だよ? 新人を寄こすってヴェルムさんが言ってたから、どんな子かなって、とりあえず教えてくれそうな人に聞いて回ったんだ』
「え? リーナさんが直接ですか?」
『……驚くところそこなのかな? ボクだって聞きに行くことはあるよ。部長室の壁には通気用の穴があってね』
どうやら正面から部屋に入って聞いて来たわけではないようだ。
とは言え、直接聞いて来たことには変わりはない。
つまり、ヴェルムが部長に掛け合ったというのは本当だろう。
彼が感情で動くことはない、とするなら、自分の中に才能があって、それに気づいてくれたという事だろう。
「ヴェルム次長って、どういう人なんですか?」
そう考えると、なんだかそれだけで、肯定的に見たいと思ってしまうのが人間だろう。
少なくともシャムレナよりは仲がいいリーナに、ヴェルムについて訊いてみたくなった。
『彼は鬼畜メガネだと思われているみたいだね、だけどそうじゃないんだ』
そもそも、メイフィは彼が眼鏡をしているところを見たことがない。
『彼は、総受けだよ』
「総受け」
総受けって何だろう?
性格の事だろうか?
『彼は全ての男性から凌辱されるんだ。目いっぱい屈辱的に、尊厳も与えられず』
彼女は何を言っているんだろう?
『そして、最後にはプライドをかなぐり捨てて、ただ快楽に墜ちるんだよ』
「は、はあ……えっと?」
『ボクの創作ではいつもそうなってるんだ』
何となく、分かっていたが、愉しそうに語るので、止めるに止められなかった。
だが、メイフィが聞きたいのはそんな想像、いや、妄想の話ではない。
「あの、そうじゃなくって、本当のヴェルムさんの事ですけど」
『本当の? いや、これもボクの中では本当(リアル)なんだけどね』
「はい、分かりました。そうですね、ヴェルムさんは総受けなんでしょう。その上で、お聞きしたいのですが、彼はどんな人となりなんでしょう?」
諦めたメイフィは一旦それを受け入れてから受け流して、再度聞いた。
『うーん、まあ、真面目?』
「まあ、そうですよね?」
それは、メイフィにも分かる。
彼は真面目だ、あまりにも真面目だ。
だから、別に自分を不真面目とも思ってもいなかった周囲が自分を顧みて不真面目だと思えてしまうこともある。
『真面目過ぎて隙がない。仕事は出来るけれど、信頼できない部下には仕事をさせない。だから、全部一人でやってしまう』
「確かに、仕事以外の事を考えてなさそうな気がしますね」
『人を変えようとしないんだ。人を変えるより自分が変わった方がコストがかからないって思ってるから』
彼の一番の特徴であり、長所であり短所でもあるのは、その、全てを「コスト」で判断するところだ。
給料を貰っている者として、自分の仕事も会社から見ればコストであり、同じ結果を最短の時間で行うよう考えることは望ましい姿勢ではある。
だが、彼はそれを徹底し過ぎているのだ。
彼のコスト管理には、人心は介在しない。
心があると仮定するなら、彼が傷ついても、他の誰かが傷ついても、それがコストカットにつながるなら、迷わずそれを選択するのだ。
おそらくリーナもシャムレナも、その被害を受けているだろう。
シャムレナがヴェルムの業務指示で動かない理由を「余計なコストがかかるから」と口にするのも、彼への皮肉だ。
自分や他人の感情には一切配慮せず、冷徹にコストカットだけを考える。
だから、言われるのだ。
「彼には感情がない」と。
『でもね、そんな彼だからこそ、間違いがないって信頼されてるし、ボクもそこは信頼してるんだ。そんな彼がメイフィちゃんはものになるって判断したんでしょ? それって凄いことだと思うけどな』
「そうなんですかね? でも、そんなこと一言も言ってくれてないですけど」
『それはみんな同じさ。ボクだって多分信頼されてるけど、褒められたことなんてないよ。前にちゃんとやったんだから誉めてって言ったらさ、給料もらってやる仕事は、ちゃんとやるのが当然だ。ちゃんと出来なかったら責任を取れ、なんて言うんだよ? そりゃそうなんだけどさ、そこは職場を円滑に動かすためにありがとうの一言くらいあってもいいんじゃないって思うんだ』
確かに、コストを言うのであれば、ありがとうの一言などただなのだから、それを言うだけで仕事がうまく行くのならそうすべきだろう。
だが、彼は無駄だと思うことは一切しないのだ。
挨拶はコストもかからないが、することにも何のメリットもない、だからしない。
本当に徹底しているのだ。
だが、その彼に自分が採用されたというのも、どうやら事実らしい。
自分はそれに見合うだけの活躍が出来るだろうか?
「……まあ、期待されていることだけは分かりました。どの部署になるかはまだ分かりませんが頑張りたいと思います」
「うん、頑張ってね。ボクもいい評価を伝えておくよ」
顔は見せてくれないが、この前見た時には歳が近いと感じたリーナ。
彼女が上司ならうまくやって行けるかもしれない。
リュークスで拒否された以上、ここで頑張って行きたい。
そう誓う、メイフィだった。
最終更新 2017/03/11 23:00:03
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