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2016年12月12日の日記 
95を書き直した。 [小説]
 えー、95を書いていたのですが。
 ちょっと面白くなかったので書き直しました。
 何でこうなったのかというと、プロットに忠実に書いたわけです。
 プロットの流れと、ページ数に忠実に書いたら、面白くなかったわけです。
 ですから、とりあえず、いろいろな制約を除いて、書きたいように書いてみました。
 で、先週からの変化ですが。

「えーっと、あんたは死にました」
「……え?」
 これまで聞いたことのない言葉、これまで聞いたことのない声に、コルシェは戸惑った。
「それで、これから私が──」
「ええ!? そこさらっと流します? ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
 まだ受け入れるとかそういうところまで頭が回っていないのに先に進もうとするので、慌てて止めるコルシェ。
「何よ? 私だって忙しいんですけど」
「あ、すみません……」
 話をしている女性の機嫌が悪くなったので、とりあえず謝る。
 コルシェはこれまで生きてきた十七年、牧歌的な農家で育ってきた。
 だから、目の前のちょっと垢抜けた感じの話し方をする高飛車な女の人の相手などしたことがないので、多少持て余していた。
「んー、あんた、街道を歩いてたでしょ?」
 女の人は、イラッとしながらも、さすがに説明不足過ぎたと思ったのか、説明を始めた。
「あ、はい、そうですね。エルメルの街に行こうと思ってまして」
「その時に、強盗に会ったわよね? そいつに殺されたのよ」
 特に感情もなく、いつもの話題であるかのように、女の人は淡々と事実だけを述べる。
 綺麗な人、というか、気の強そうだが、若干つり上がった目が大きいので幼く見え、だから可愛いとも言えるような女性だった。
「強盗……? あ! あいつか!」
 コルシェは強盗、と聞いてもすぐに何も思いつかなかった。
 だが、そう言えば強盗らしき奴に会ったのを思い出した。
 それは死ぬ寸前まで、いや、死んでからもこうして言われるまで強盗であったと気づかないような者だった。
 それは小柄な少女で、コルシェより頭一つ分くらい背が低い女の子が、ナイフ一本コルシェ向けて「お金を置いていくっす! 身ぐるみも置いていくっす!」とか言っていた。
 コルシェは平和な田舎に住んでいたので、盗賊や強盗という存在は知っていたが、実際に会うことはなかった。
 ましてやこんな女の子が強盗なわけがないと頭から思っていた。
 だから、何かのイベントか勧誘かな、と思ってしまった。
 ナイフを突きつけられても、笑って「お金は無理だけど、干し肉を持ってきてるから分けてあげようか?」と言おうとした。
 言おうとしたのだけは、憶えている。
 だが、その後、どうなっただろうか?
 記憶がない。
 彼の記憶はそこで途切れてしまったのだ。
 強盗の前で荷物の中身を取り出そうとしてはいけない、荷物はそのまま投げ捨てて全て奪われるのが、生き延びる道なのだ。
 彼は、それを知らなかった。
 だから、その後、彼にとって信じられないことが起きた。
 いきなり呼吸が出来なくった。
 そしてそのまま何が起きたか分からないまま──。
 その後は憶えていない。
 記憶がないまま、今ここにいる。
「そうか……あれで殺されてたんだ……」
 あの、自分より年下の女の子に殺されて、死んだのだ。
 彼には、あんな子が人を殺すなどという感覚がまるで、なかった。
 ちょっと若者同士が殴り合いのけんかをしただけで村中の噂になるような農村だった。
 人を殺そうとする者など見たこともなく、噂には聞いていたが、コルシェはもっといかにもな悪を想像していたのだ。
 そんな農村は珍しくもなく、この国を含むこの地域全体で、戦争やいざこざが起きたことが、少なくともコルシェが生まれてからはない。
 平和な国々と、平和な国民たち。
 けれども、世界全体が平和で、全員が安全に暮らしていける世の中でもない。
 街には盗賊もいるし、街道には強盗もいる。
 コルシェは運悪く、それに殺されただけだ。
「自分の境遇を理解した?」
「分かりましたけど……それなら、あなたは誰ですか?」
 自分が死んだ、ということを受け入れなければならないと、徐々に納得している。
 だが、そうなると目の前の、自分が死んだと告げているこの女性は誰なのだろうか?
「なんでそんなことを聞くのよ?」
「いや、俺が死んだって言うなら、何故あなたとは話が出来るんですか? 普通の人間とはもう話が出来ないんですよね?」
「そうね、あなたはもう、普通の人間とは話は出来ないわ。私のように特別な存在とだけ、話が──」
「いや、早く教えてくださいよ」
「言おうとしてるんじゃないの! 何で急かすのよ!」
「いや、多分どうでもいい前置きを言おうとしてたから、飛ばして欲しいなと思って」
「そういうのが大事なんじゃないの! 私の神性? そういうのを醸し出すために!」
 そういうものはほっといてもにじみ出てくるんじゃなかなあ、とコルシェは思ったが、それはそれで話が長くなりそうなので言わなかった。
「すみません、俺、今何が起こってて、これから何が起こるのか、早く知りたいんです。だから、早く教えて欲しいんです」
「……まあ、それならしょうがないわね」
 女性はやれやれ、という態度をする。
「で、誰なんですか?」
「私の正体は何と! ……って、今言うところじゃないの! なんで急かすのよ! 死んだのだからちょっとくらいのんびりしなさいよ!」
「分かりました、ごめんなさい。それで誰ですか?」
「聞いて驚きなさいよ? 私の子の見た目の美貌、あふれ出る知性、にじみ出てくる神性、そして──」
「早くしてくださいよ」
「うがぁぁぁぁっ!」
 女性が飛びかかってきた。
「うわっ!?」
 動きが遅かったので慌てて手首をつかむ。
「離しなさい! はーなーせーっ!」
 コルシェはだんだんその細い手首を握っているとだんだん罪悪感が湧いてきて、離してしまうが、女性の方ももう攻撃の意志な内容だ。
「フレイヌ! 私は女神フレイヌよっ! 知ってるでしょ! 崇め祀りなさいよ!」
 コルシェより少し背の低い女性がフレイヌを名乗りコルシェを見上げてにらむ、涙目で。
 女神フレイヌ。
 残念ながら、コルシェはその名前を知っていた。
「……あー」
 そして、その女神が女神の癖に軽い理由も何となく分かった。
 炎の女神フレイヌ。
 それは誰もが知っている女神だ。
 どちらかというと邪神という認識の方が強いだろう。
 かつては魔王を生み出したとも言われている、人心を惑わせて戦いに駆り出す神とも言われている。
 多くの教会では、彼女の誘いに打ち勝つ事こそが、人としての第一の試練だとも言われている。
「……何よ、その顔?」
「いえ? 元々こういう顔ですが」
 だが、流石に本人を前にして、邪神とか打ち勝つとか、そんなこと言えないので誤魔化した。
「違ったでしょうが! さっきまではもっとこう、田舎育ちで幼さも残ってるけど、爽やかですっりとした整った顔の少年って感じだったじゃないの!」
「何でそう、細かいんですか! 恥ずかしいから人の顔面分析するのやめてくださいよ!」
「それが何なのよ!? 今はまるで胡散臭い人を見るような表情じゃないのよ!」
「胡散臭い人を見てるからに決まってるだろうが!」
「言った! 言ったわね女神に! 天罰よ! ここでは使えないけど天罰下すわよ!」
 半泣きで殴りかかってきたので、また手首を掴んで止める。
 その動きは喧嘩すらしたことがない女の子のそれと同じだったので、手首を掴むくらいわけないし、恐らく殴られても大して痛くはないだろう。
 女神は置いておいて、そんなか弱い女の子にひどいことを言ってしまったと反省するコルシェ。
「あー……すみませんでした、言い過ぎました」
「あんたも私のこと邪神だと思ってんでしょうが!」
「そんなことないです! どちらかというと素晴らしい神だと尊敬しています!」
 可愛い顔に涙目で詰め寄られ、コルシェは目を反らす。
「目を逸らしたっ! やっぱり嘘かっ!」
「本当です! あまりの神々しさに目を逸らしてしまいました!」
「嘘つけっ!」
「嘘でした!」
「うがぁぁぁっ!」
 また、殴りかかられる。
「みんなそう! 何なのよあんた達!? あれだけ火の世話になっといて! 私に文句があるなら、今後料理で火を使うなっ!」
「ごめんなさい! すみません!」
 邪神とは言え女神が怒っている以上、下手に出るしかないだろう。
「まったく、これだから原住民(ナチュラル)は! 異世界転生者(フォーギナー)は本当、素直で、私をすぐに女神って認めたのに!」
「あの、異世界転生者って何ですか?」
「面倒くさいわねえ、この世界じゃない世界の死人の魂をこの世界に連れて来ることよ」
「この世界じゃない世界の死人の魂……?」
 コルシェの知っている世界の次元を超えているため、意味が分からなかった。
「あの子達は本当、変な知識はあったけど、この世界のことは知らなかったから素直だったのよ、ここにいるときはね」
 ここにいるときは、という言い方に少し棘があったが、わざわざ聞き返す気もない。
「とにかく! この私が! 死んだあんたを生き返らせてやるって言ってんのよ! ありがたく思いなさい!」
「え……本当に?」
 自分を生き返らせてくれる。
「本当よ!」
「も、もしそれが本当なら、今後ずっとフレイヌ様を信仰してもいいです!」
「それはいい心がけね」
「確かにそれは、いばらの道ですけど……。多分、どの町に行っても大きな集団からは弾かれるでしょうけど……迫害もされるでしょうけど。たとえ不幸になっても、俺はフレイヌ様を──」
「何で私の信者になると不幸になる前提なのよ!」
「いや、それはだってそうじゃないですか!」
「ならない! 今も私の信者は街の隅っこで幸せに生きているわ!」
「分かりました、生き返らせてくれるならそれくらい受け入れますよってことですから」
「ただし、生き返らせるのには条件があるわ。これを呑んでくれるなら生き返らせてあげる」
「いや、フレイヌ教の信者になれってことだけでも物凄い無茶で理不尽なんですけどその上まだ条件があるんですか?」
「全人類が私の信者になることは当たり前の事じゃない。だからそれは数えないわ」
 コルシェは心の中で、よし、信者になるのはやめよう、と思った。
「……なんですか、その条件って?」
「あなたに、一つだけ女神の恩恵(チート)と呼ばれる能力をあげるわ。それを活用して、世界征服をしなさい!」
 ばん、と突拍子もないことを言われ、コルシェの頭はすぐにそれを消化できなかった。
「……は?」
「だから! 世界征服しろって言ってんのよ!」
「いや、聞こえましたけど……何でですか?」
 まさか、女神に世界征服しろと言われるとは思わなかったので、聞き返した。
 この女神が魔王を作ったって噂は本当だったのだろうか?
「だって、平和だったら誰も私を敬わないじゃん!」
 女神フレイヌは、仮にも一応女神のフレイヌは、とても軽い口調で、とても自己中心的な理由を吐いた。



最終更新 2016/12/12 0:23:44




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