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2016年7月31日の日記
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夏コミ新刊の紹介
[小説]
さて、他人の代表は夏コミに当選しました。
スペースは三日目の東館の5号館と6号館の間のパ13bです。
お隣さん背後が面倒なサークルでありませんように願うところですが。
今回の新刊は、三年ぶりのハイファンタジーです。
タイトルは「絶対に笑ってはいけない王国」です。
まあ、タイトルから分かると思いますが、年末の番組のパロディです。
これも元々は賞レース用に書いた作品で、前から言っている通り、賞のものを同人に転用する場合、最低でも一次通過している作品である必要があるのですが、ちょうど同人で何を出そうと検討している時にファンタジアで二次落ちしたのでそのまま流用しています。
今回600円で頒布しますのでコミケ会場ではよろしくお願いいたします。
そんなわけで、今回はその一部を公開します。
こことは別の部分をサイトにはPDFでも公開しています
「はい……でも、どうしますか? 入れなかったんですよね?」
「うん、だから今度は裏門に行こう。で、話し合う前にもう、演奏と踊りを見せてしまおう」
僕の演奏、フュロスの躍りには自信がある。
見てもらえば必ず分かってもらえるはずだ。
「え? それって人前で何の前触れもなく踊り始めるって事ですよね?」
「まあ、そうなるね?」
「やですよ! 変な人じゃないですかっ!」
「まあまあ、僕がその前に演奏始めるからさ。何かあったらその段階で演奏止まるし、大丈夫だって」
まあ、確かに踊るフュロスがメインだからね。
僕の演奏はフュロスを演出しているだけだ。
その場の空気によるけど、大抵注目されているフュロスの方が恥をかくんじゃないかとは思う。
だけど、フュロスは元踊り子(アイドル)なんだ。
大勢の人の前で踊る度胸は当然あるし、それが恥ずかしいなんて子じゃない。
そして何より──これは絶対にフュロスには言えないけれど──いつもあんな格好をしてるフュロスは、ある程度の恥なんて平気なはずだ。
いや、だって、マントの下に踊り子(アイドル)衣装って、ねえ?
下着と大して変わらない露出だし、スカートは一応あるけど、レースになってて、パンツが見えるか見えないかギリギリだし、あんなの着て恥ずかしいなんて思わないって事自体、僕には信じられない。
ていうかね、踊ると普通にパンツ見えてるしね、指摘しないけどさ。
「うーん……まあ、そういう作戦なら手伝いますけど……」
しぶしぶ、といった様子で、フュロスが承諾する。
「うん、ありがとう。僕が先に出て行くから、後ろからついて来て。あ、レイナムさんは、ないと思うけど万一門兵が暴力を使ってきた時に守ってくれませんか?」
「承知した」
「じゃ、行こうか」
僕はリュートを取り出して、荷物をレイナムさんに預ける。
フュロスもマントを脱いでレースを付けてレイナムさんに手渡す。
裏門は表門と違い、大扉は閉じている。
ただ、その隅にある小さな扉が開いており、そこに数人の門兵が詰めていた。
まず、僕がリュートを弾く。
そして、微笑みながら門へと近づく。
僕の後ろにはフュロスとレイナムさん。
門兵は警戒するけど、正門程警戒されてない。
やっぱり、音楽と僕の後ろの二人の可愛い女性が警戒心を失わせているんだろう。
このまま、まずは素性を明らかにしないまま芸を見せよう。
「こんにちは! お仕事中の皆様に、我々の芸をお届けします! 音楽だけじゃありませんよ? フュロス!」
僕の合図とともに、フュロスが前に立ち、踊り出す。
酒場のおっさん達とは違い、勤務中である彼らは、フュロスの身体に露骨な好奇の目は向けなかったけれど、それでもちらちらと見ていた。
そして、そのチラ見はいつの間にか、ガチ見になり、そして、ガン見になった。
思った通り、みんなフュロスの踊りに魅了されてくれた。
こうなったら交渉は楽だ。
まあ、宮廷楽師までは難しいが、城内に掛け合ってくれるくらいはしてくれるはずだ。
さて、まずは交渉で何と言うか──。
「……あれ?」
ケイラームの神託書が、レイナムさんに預けた荷物の中で光ってる。
何だろう、うまくここを通してくれることになるのかな?
まあ、空気が読める女神だから、門兵を倒すとかそんなことにはならないだろう。
「レイナムさん、お願いします」
「うむ……『フュロスのパンツが落ちる』と」
「え……?」
僕がそう聞き返した瞬間だった。
ぱちん
大きな音ではないはずなのに、はっきりとそう聞こえた。
音のした方、フュロスを見ると、ゴムが切れたのか、パンツがすとん、と落ちてくる最中だった。
「……え?」
その時のタイミングで足は上げていなかったので、最悪の事態は免れた。
「き、きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
フュロスは物凄い勢いでその場に座り込んだ。
女の子のパンツのゴムが切れて落ちる、という事態はそれだけで惨事だが、フュロスの露出の多い格好の場合それは大惨事だった。
それは、分かる、うん。
女の子がパンツを失うということは、どれだけ不安で、パンツを見られるということが、どれだけ恥ずかしいのか、体験も経験もないけど理解は出来る。
本当、フュロスは可哀そうだと思う。
だけどさ、目の前でいきなりパンツが落ちたんだよ?
さっきまで華麗に、妖艶に踊ってた女の子のパンツが、いきなり落ちたんだよ?
男たちを魅了する小悪魔のような容貌で、まさに魅了させてからかうような踊りを踊ってた子のパンツがさ、すとーんって。
そのギャップに、僕は限界だった。
そして、それは僕だけじゃない。
勤務中の門兵たちも同じようだ。
僕たちは全員身を震わせながら耐えていた。
なるべくフュロスの方を見ないように、この衝動的な笑いが治まるのを耐えた。
「うわーん! このパンツ、お気に入りだったのにぃぃぃぃっ!」
そこかよ!
ああ、もう駄目だ。
「うわははははははははははははっ!」
「はははははははははっ!」
「あははははっ! あはははははははっ!」
「わっはっはっはっはっはっ!」
僕が笑ったのをきっかけに、門兵たちも吹き出した。
しかもこれはそう簡単には治まらなかった。
僕たちは腹を抱えながら笑い続けた。
ででーん、コナット、ポマル、ツィアード、サンゲツ、アウト
「てっ……はははははっ!」
「あうっ……あはははははっ!」
「たっ……うわはははははっ!」
「うっ……わっはっはっはっ!」
笑いは、それでも治まらなかった。
ででーん、コナット、ポマル、ツィアード、サンゲツ、アウト
僕たちは、笑い転げながら、五回くらいは精霊の懲罰を受けた。
「いや、いいものを見せてもらった、ありがとう」
門兵の中で、リーダと思われる人が言うけど、「いいもの」って踊りだろうか? パンツが落ちて恥じらうところだろうか? それとも、見ちゃったんだろうか。
最終更新 2016/07/31 22:05:58
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